子供が夏休み前の課題で、図書室から借りてきた本。
その中にとんでもない絵本が紛れてました。
数々の絵本を見てきた私をして、「なんだこれ…は…」と絶句させた本。
出版は1981年ですが、おそらく知らない方が多数かと思います
読み終えた後に戦慄が止まらない絵本、「きばのあるヒツジ」のご紹介です。
- きばのあるヒツジとはどんな話?
- きばのあるヒツジの怖いポイント1「歯を入れ替えていくヒツジ達」
- きばのあるヒツジの怖いポイント2「肉を食べるようになるヒツジ達」
- きばのあるヒツジの怖いポイント3「衝撃のラスト」
- きばのあるヒツジのテーマは「武力紛争」か
- まとめ 本当に怖い絵本とは?
きばのあるヒツジとはどんな話?

あらすじを簡単にご紹介します!
オオカミの脅威に日々怯えているヒツジたち。
ある日、一匹の老いたヒツジが妙案を持ちかけます。
それは、死んだ肉食獣の骨からきばを抜いてノリでくっつけるというもの。
「きばを生やして、肉食獣を威嚇しておっぱらおうぜ」というものでした。
その提案を最初はいぶかしがっていたヒツジたち。
しかし、自分の命には変えられません。
一匹、また一匹と肉食獣の骨を叩き割り、自分にきばをくっつけていきます・・・
この描写が不気味すぎ!!
きばのあるヒツジの怖いポイント1「歯を入れ替えていくヒツジ達」
このきばのあるヒツジの怖いポイントは、ヒツジたちが歯を入れ替えていく描写です。
その方法は、石でわざわざ健康な歯を叩き折り、死んだ肉食獣の骨から抜いたきばをいれこむというもの。
もとより年寄りヒツジは歯がなかったので、きばを差し込むのは容易でしたが、若いヒツジ達はそうではありません。
わざわざ健康な歯を折って、きばを差し込んでいく描写は、まるで力と引き換えに大事なものを失っていくかのようです。
野生の動物にとって「歯」ってかけがえのないものですからね…
きばのあるヒツジの怖いポイント2「肉を食べるようになるヒツジ達」
きばを生やしていった結果、ヒツジたちはオオカミをおっぱらうことに成功しました。
しかし、その後に大変な弊害がまっていました。
なんと主食である「草」が食べられなくなってしまうのです。
それから、どうなったと思いますか?
なんとヒツジ達は、シマウマなどの草食獣を襲い、生肉を喰らうようになっていくのです。
さらに自分達を「猛獣」と錯覚し始めます・・・!
あらゆる生き物を喰らいつくしたヒツジ達は、食料となる草食獣を求め、別の土地へ大移動するのでした。
きばのあるヒツジの怖いポイント3「衝撃のラスト」
食べ物を探して移動するヒツジ達は、あるカモシカの集団に出会います。「うまそうなやつらに出会った」とヒツジ達が喜ぶのもつかの間。
ヒツジ達に気づいたカモシカ達はニヤリと笑い、その口からきばを覗かせるところでお話は終わります。
カモシカ達もまた、武力に魅入られた集団だった…!
きばのあるヒツジのテーマは「武力紛争」か
きばのあるヒツジ、ユーモラスなタッチなだけに内容とのギャップに震えます。
ですが、テーマはかなり深いものがありますね
ヒツジ達は、当初は自衛のために武力を身に付けたはずでした。
しかし自らを変貌させすぎた結果、いつの間にか「かつての自分達のように弱きもの」を狩る側、つまりテロリストに成り下がっていきます。
ラストでヒツジ達は、自分たちと同様に「肉を喰らう獣」と化したカモシカ達と対峙しますが、その後どうなったかは一切描かれていません。
「連鎖する命の奪い合い」、つまり武力を手にいれることへの痛烈な皮肉が、この絵本に込められているのです。
まとめ 本当に怖い絵本とは?

この記事を描く前に「怖い絵本」で検索してみたところ、どれも怪談系の絵本をまとめたものばかりでした。
違うんですよ。
そんなのは全然怖い絵本ではないんです。
本当に怖い絵本は、「人間の闇の部分」に迫る絵本なんです。
この「きばのあるヒツジ」は、怖さだけでなくテーマの奥深さもあり、傑作絵本といっても過言ではありません。
子供に読ませて、是非感想を聞きたい絵本ですね。
もっと多くの人に知ってもらえるといいなと思います!